撮影場所は、わたしが考えていたような広いスタジオでは無く、普通のお部屋でした。 部屋には、暗幕が全体に掛けられていて、一面真っ黒って感じになっていました。
「では、さっそくだけど、その服のままで、その真ん中に立ってもらえるかな?」と、碇監督さんが言ってきたので、素直に部屋の真ん中に立つと、「固められる前の姿を撮影するから、ちょっとニコッとしてそこでポーズを取ってもらえるかな」
「はい!!」
「いつも、撮影を開始して、途中で、あぁ〜撮影する前の状態を撮影するの忘れていたぁぁ〜 って事があるので、今日は忘れなかった」といって、碇監督さんが笑っています。
小林さんは、碇さんの後ろで、小瓶を持って、その中身を棒で混ぜています。あれはなんなんでしょう・・・
今日のわたしの服装は、上は白色のワンポイントが入っている、デザインTシャツで、下は膝上のちょっと短めの、水色のスカート、ソックスは普通に白色って感じです。
碇監督さんが、撮影用に何らかの衣装を用意してくれるのかなっておもっていましたが、どうやら今日の撮影は、わたしの私服を撮影するみたいです。
そんな、わたしの気持ちを察したのか、碇監督さんが、「本当はかわいい衣装を用意しようかと思ったのだけど、サイズ等もまだ詳しくわからないし、普段着ている服の方が、生活感がでるというか、非現実的な行為をする時は、現実感(本当)が、有る方が、なんかいいんだよねぇ〜って思うんだよ!!」
「あっ、わかります、碇監督さんの作品で、金粉姿の女性がゲームしていたりいているのが、なんか好きです!!」
「おぉ〜わかってもらえるとは!! うれしいなぁ〜 シュールすぎて、おかずに使えないって意見も多いけど、お客さんの記憶に残るのは、金粉で裸の女性より、金粉姿でゲームしていたり、エプロンして家事をこなしていたり、外散歩したりする方だったりするんだよ!!」
こんな会話をしながら、わたしの私服姿を、映像と写真撮影した碇監督は、「ちょっと待ってね・・・」って言い残し部屋から出ていき、なにやら銃の様な物を持ってきた。
わたしが、なんだろうと思っていたら、碇監督さんが説明を始めた。
「これは、スプレーガンと言って、この銃みたいな上に付いている銀色の容器にペンキを入れて、このスプレーガンに繋がっているホースの先にエアタンクがあって、空気の力で、車なんかに、塗装するときに使う奴なのです。 ちょっと大がかりな道具なので、スタジオなんかに持ち込めないし、音もうるさいので、都内のマンションなんかでも無理なので、本日の撮影場所となっているのです!!」
「そうなのですね・・・ 待ち合わせのバスターミナルから車で40分、さらに、未舗装の細い山道を入った所なので、ずいぶん寂しい所に入って行くなと、思っていましたが、逆に、周りに誰もいないから色んな事が、やりたい放題なんですね・・・」
「そうそう、やりたい放題なのです!!」
「では、弥生ちゃんお待ちかねの、この銀色の容器に今日入れるのは、ペンキではなく、これです」と、言って、先ほどから小林さんが混ぜ混ぜしていた、小瓶を碇監督さんが受け取り、その小瓶をわたしに見せた。
小瓶は、200ml位の透明な液体が入っており、ちょっと「トロッ」と、している。