ラップの機械で、10重に巻かれてしまっている私、しかも、顔にも2重に巻かれ、足先から、頭の先まで完全にラップで巻かれ、全く身動きができない状況になっています。
こんな状況になっているにも関わらず、私が危機的状況より快楽を選んでいるかというと、そうではないのです。
私には、この危機的状況を、なんとかできる方法を知っているから、あまり焦りを感じていないのです。
私の手には、案内の指示通りに、持っている、ボタン(緊急連絡スイッチ)があるのです。
このボタンを押せば、大丈夫。その為の、ボタン(緊急連絡スイッチ)なのです。
今は、ラップ巻き作業が終わり、機械音も無く、シーンと室内が静まりかえっています。
さすがに、止めていた息も苦しくなって来たので、肺に溜めていた空気を吐き出そうと・・・
空気を吐き出そうと・・・
あれっ・・・
吐き出すことができません・・・
口を開いた状態のまま、ラップで2重に巻かれてしまっていますが、ちょっとした隙間などから、呼吸ができるのではないかと考えていたのですが、どうやら私の考えは甘かったようです。
慌てて、さらに肺に力を加えて、空気を吐き出そうとしたのですが、私の口元にあるラップは、空気に押されて膨らんだりする事も無く、微動打にする事なく、私の口を開いたままラップされています。
どうやら、肺に貯めておいた空気を吐き出す事が出来ないようです・・・
この時、さすがに「これ以上はヤバイ」と思い、手の中にあったボタン(緊急連絡スイッチ)を押したのです。
ラップ巻きの作業が終わっている室内は、物音が全くありませんので、ボタンを押した後に聞き覚えのある声、そう、私を案内してくれた「小林」という女性の声が鮮明に聞こえて来たのです。
「どうかされましたか?」
小林という女性が尋ねて来ました。
私は今、口元まで塞がれて苦しい状況を伝えようと思ったのですが、声が出ません・・・
小林という女性は、私が居る部屋に直接来たのでは無く、どこかの部屋からマイク越しで話しているようです。
病院のナースコールのような仕組みだと、私はこの時、理解しましたが・・・
よく考えると、ビデオカメラでの監視はしておらず、音声のみの監視だと、案内書に書かれていた事を思い出しました。
と、いう事は、この危機的状況を小林という女性は、映像では監視していない。
緊急な出来事があった時は、音声のみで監視しているので、今、言葉を発する事が出来ない私の、この状況を伝える事が出来ない・・・
もう、終わった・・・
こんな危機的状況になってしまっている、私・・・
心のどこかで、このような体験を望んでいた、私・・・
私自身の命までかけて、被虐体験し、こんな結果になっている、私・・・
「・・・さん、どう・・・・か?・・・」
小林という女性が何か尋ねてきているようだが、苦し気持ちよすぎて・・・
もぅ・・・